ホテル業界 13のこと | HOTERES新卒情報 2026

これだけは知っておこう
ホテル業界 13のこと

#01 日本にあるホテル・旅館の軒数

厚生労働省発表の「令和4年度衛生行政報告例」(2023年10月31日 発表時点)によると、日本全国のホテル・旅館の営業軒数は 5万321軒(前年度比202軒減)。新型コロナの影響で閉館する施設があり、3年連続で減少した。
一方、ホテル・旅館業の客室数は177万752室と増加傾向。訪日外国人の増加や、コロナ禍の影響で社会に広く普及したテレワークを背景に、宿泊特化型ホテルを中心に新規施設が開業し、都道府県別では東京都や沖縄県で増加した。
コロナ禍では在宅勤務やサテライトオフィスなどが広まり、自宅でもオフィスでもないサードプレイスを仕事場として探す人たちも登場。ホテル業界でも宿泊特化型ホテルを中心にこのニーズを捉え、客室に仕事用のデスクや椅子、ネットワーク環境を整えるなど、テレワークに適した環境やサービス、利用プランを提供するところが増えたのも要因の1つと言えるだろう。
旅館業法の改正(2018年6月15日施行)により「ホテル営業」「旅館営業」の営業種別が統合し「旅館・ホテル営業」となったため、2017年度以前の「旅館・ホテル営業」は「ホテル営業」と「旅館営業」を合計した数である。
過去の数値をご覧いただくと、旅館は時代とともに減少しているが、ホテルは増加傾向にある。


#02 日本のホテル産業の歴史

日本で最初のホテルは、1860年にオランダ人のC. J. フフナーゲルが創業した「ヨコハマ・ホテル」と言われており、その証として今も横浜市山下町には「ホテル発祥の地」という碑が残っている。そして、かの有名な「築地ホテル館」が東京築地の船板町に創業したのは1867年のこと。日米和親条約締結により来日外国人増加が予想されたために、幕府の指揮のもと建てられたものであった。しかし、その後、急激にホテルが増えることはなく、1890年に「帝国ホテル」が開業するまでは、本格的な都市型ホテルは建設されなかった。

日本のホテル産業が本格的に稼動し始めたのは、1964年の東京オリンピックがきっかけ。開催が決まると、これに合わせて「ホテルオークラ」(1962年)、日本初の外資系ホテル「東京ヒルトンホテル」(1963年)、そして開催年には「ホテルニューオータニ」、「東京プリンスホテル」、「羽田東急ホテル」などが完成。さらに1970年の大阪万博、1972年の札幌冬季オリンピックの開催で、東京を中心に進展していたホテルブームは地方へと広がっていく。また、その頃からベビーブーム世代が結婚適齢期を迎えたことで、料飲・宴会を基盤におくホテルが急増した。

80年代になると地方の交通網が拡充され、低価格を謳ったビジネスホテルがチェーン展開に乗り出した。そして時代はバブル全盛期に突入、それに後押しされて異業種がホテル業界へ参入するなど、業界全体が活況を呈した時代であった。

しかし、90年代に入るとバブル崩壊とともに企業の接待交際費が削減され、これまでの料飲・宴会型ホテルは経営が傾き、「宿泊主体型」と呼ばれる新しい形態のホテルが登場。また、日系ホテルが苦戦を強いられる一方、地価の下落を機に外資系ホテルが都市部に進出。順調に業績を伸ばしてきた。

2000年を過ぎると都内で大型の都市開発が進み、街のブランド力アップを目的に、ホテルを誘致するケースが増えた。六本木ヒルズの「グランドハイアット東京」、汐留シオサイトの「コンラッド東京」、東京ミッドタウンの「ザ・リッツ・カールトン東京」がそのいい例だ。
そして、2008年のリーマンショック後、高級路線をいくホテルが業績を落とす一方で、勢いがあるのが先に紹介した「宿泊主体型ホテル」や、さらに機能を絞り込んだ「宿泊特化型ホテル」だ。宿泊主体型・特化型ホテルは、設備投資や人件費等の運営コストを抑えることができるため利益率が高い。最近は、これらのホテル間でも差別化競争が始まっており、デザイン性の追求や、ユニークなコンセプト設定、温浴施設などの付加価値の創出など、思考を凝らしたホテルが増えている。

今後の業界展望としては、次の2つの方向で変化していくことが予想できる。
1つは、チェーン化比率が高まるということ。米国のホテルの半数以上がチェーンホテルであるのに対し、日本のホテルのチェーン比率はまだ 2~3割程度である。スケールメリットを生かしたビジネスが有利なために日本においてもチェーン化が進むであろう。
2つ目は、二極化が進むということ。高価格の外資系ラグジュアリーホテルと低価格の宿泊主体型ホテルが増える傾向にある。日本人の経済格差が広がっていること、InnとHotelの使い分けを消費者がするようになったことが背景にあると思われる。


#03 ホテルビジネスの特徴

ホテルビジネスの本質的な特徴について、ここで考えてみよう。
モノを作っている製造業、モノを販売している小売業、お金を貸したり投資したりしている金融業などとは違う、ホテルビジネスの特徴は、どんなことなのだろうか。

ホテルは「装置産業」である!

ホテルビジネスとは、不動産(土地や建物)を取得し、そこに大きなお金を投資してホテルという施設(装置)を用意し、お客さまを呼び込む商売である。別名、「ハコモノ」商売ともいう。分譲マンションという不動産は、建物を建ててそれを売る。賃貸マンションは、月極めで建物を貸す。そして日替わりで貸すのがホテルなのだ。
また、建設時にはもちろん、商品としての魅力を維持・向上させるには必要に応じて改修をしなければならず、その都度莫大な経費がかかるのも装置産業の宿命。その分もきちんと売り上げ、利益として回収するには長い時間がかかるビジネスともいえる。

ホテルは「サービス業」である!

土地・建物という不動産にサービスという付加価値をつけて価値を生み出しているサービス業である。サービスを担当する人的資源が必要とされる。
そのため、労働集約型産業とも呼ばれ、一つの建物内に多くの人手を抱えなければいけないのも特徴。製造業であれば、海外の土地や人件費が安い国に工場を造ることでコストを削減できるが、ホテルの場合はそういうわけにいかない。そのため、総じて人件費が高いのである。

ホテルは「体験価値提供産業」である!

お客さまは、ホテルという建物の中で宿泊したり、食事をしたり、パーティーを楽しんだりする。そしてお金を払う。ただ、お客さまはホテルから持ち出す「物理的なモノ」は何もない。ホテルでお客さまが買うものは、モノではなく、時間や体験といった目に見えないものなのだ。目に見えない商品、手に取れない商品を高いお金を出して買っていただくのであるから、ホテリエに求められるスキルは非常に高いといえる。


#04 ホテルの契約形態

主に“所有直営方式”、“フランチャイズ方式”、“リース契約方式”、“運営受委託契約方式” の4つに分かれる。

所有直営方式

所有と経営と運営において、そのすべてが一致しているもの。自社で土地・建物を所有し、経営も運営もすべてを社内で行なう。そのため、ホテルが生み出す利益はすべて自社のものとなるし、リスクもすべて自社で負うことになる。

フランチャイズ方式

所有直営方式のホテルが、ブランド力のあるホテルオペレーション会社からブランド名を借りる契約。ホテル側は、オペレーション会社に売り上げの数パーセントをフランチャイズ料として支払う。分かりやすく言えば、看板を借りて、使用料を支払う契約。

リース方式(賃貸借契約)

不動産を所有するオーナーが別にいて、そのオーナーに対して(基本的には)一定額の賃料を支払っていくことでホテルを運営する方式。

運営受委託契約方式(MC方式)

オーナー会社がホテルオペレーション会社に運営を委託し、オペレーション会社が総支配人をはじめとするキースタッフを派遣して、ホテル運営のみを行う形式。英語で「Management Contract」と呼ぶため、その頭文字を取って「MC方式」と呼ばれる。売上・利益の数パーセントを、マネジメントフィー(手数料)として、オーナーがオペレーターに支払う。


#05 サービス業の特性と消費者購買行動

サービスとは
世の中には数多くの産業がある。ホテル・旅館・レストランなどは、概して「サービス業」と言われる。サービス業とは、人の欲求をサポートすることを主な仕事とした業種である。「美味しい料理が食べたい」、「楽に移動したい」、「癒しが欲しい」、「快適に過ごしたい」などといったような顧客のニーズを、さまざまな手段によって満たすことで対価を得ている。そのため、人々の欲求が多様化すればするほど、サービス業に属する業種の数も増えていくことになる。ここでは大きく3つに分けて、サービス業とは何なのかについておおまかに解説したい。

①「情報を提供する」サービス

まず1つ目の分類として、情報を提供するサービスが存在する。情報を提供するサービスには弁護士への相談業務などがある。さらにテクノロジーの進化とともに、コンピュータのプログラムやデータの提供を行う業務なども、含まれるようになった。これらは、情報サービス業と言われている。

②「物を提供する」サービス

物を提供するサービスで身近なものとして、レストランや食堂がある。生産者から仕入れた食材をより美味しく食べられる形に加工し、それを顧客に提供することで利益を得ている。確かに、素材を加工し製品の形にする工場などとも似ている部分があるが、業種の分類においてレストランはサービス業に属している。

③「快適さを提供する」サービス

遠くまで移動する時には、新幹線や飛行機を使う事がある。この新幹線や飛行機の運行、管理もサービス業といえる。目的地までできる限り速く、楽に移動する手段を提供する事で利益を得ている。また、ゲームセンターや遊園地などの娯楽施設もここに分類される。

接客業とは
接客業では顧客と交流し、必要なおもてなしをする。身近なところでは販売業における店員で、店に入店すれば顧客が求める商品を探してくれたり、相談に乗ってくれたりすることもあるだろう。多くの場合は商品の売上につなげるためである。接客業が他のサービス業と異なる点は、コミュニケーションや顧客との交流に重点を置いた業種であることだ。接客業は顧客に対して、直接おもてなしやサービスを提供する仕事であるため、ホテルや旅館のフロントサービスなどは接客業に位置する。
サービス業の“真実の瞬間”
表は、消費者の評価と行動属性によりサービス業を分類しているものである。表では「ホテル旅館・レストラン」などは経験属性が高いといわれており、それはすなわち「購入前の評価が難しいため、商品(サービス)の評価は主に購入という経験によってなされるもの」と定義できる。
例えば、レストランでメニューをオーダーし、それを店員がオーダーテイクしているときは、店員の「声・表情・マナー・しぐさ」などがサービスの経験の質として顧客に購入されていることになっている。この、顧客と店員が直接に接触する数秒~数十秒こそが、その企業全体に対する印象・評価を決定する“真実の瞬間” となる。サービス業において「マニュアル」などが存在するのは、サービスの質のバラツキを防止するためということがわかる。


#06 ホテル・旅館運営の4要素

近年ホテルを取り巻く社会環境は時代とともに変化してきており、外資系のホテルチェーンや国内の独立系ホテル・旅館はホテル運営の効率化や収益の最大化に日々努力している。弊社の独自調査によると2023年までに国内に約10万室のホテルが創出されるといわれている。

ホテル運営には4つの重要な要素があるといわれている。

①食事(朝食・昼食・夕食)
②アクセス(立地・場所)
③施設(客室・レストランなどの付帯設備も含む)
④サービス(インルームダイニングなど)


の4つである。ホテルを開業するにあたり、上記の4つから自社の魅力を発掘し綿密なマーケティング調査を行い、コンセプトやターゲットを設定しホテルを運営しているのだ。
また、この中でも近年「朝食」の重要性が増してきており、その理由は経営側にとって投資額が少なく、従業員の創意工夫によっていろいろなサービスを創造することが可能になるからである。


#07 ホテルの売り上げ

ホテルの売り上げに関わる部門を大きく分けると、「宿泊部門」、「料飲部門」、「宴会部門」、「そのほか」がある。そのほかというのは、ホテルメイドのお菓子、アメニティグッズなどの物販や駐車場収益など。

一般的なシティホテルの場合、部門の収益の割合は「3:3:3:1」である。いわゆるビジネスホテルのような宿泊主体型ホテルに近付けば近付くほど、当然ながら宿泊の収益の割合が大きくなる。また、大きな宴会場を持ち、婚礼などに力を入れているホテルほど、宴会収益の割合が高くなるのだ。日本のホテルの特徴は、宴会収益の割合が高いこと。婚礼をホテルで行う習慣がその原因の一つである。欧米のホテルの場合、一般的には宿泊売り上げが8割を占め、残り2割が料飲と宴会となっている。

ホテルの宴会部門の売り上げには、大きく分けて2つある。
一般宴会と婚礼の2つ。これまでは、婚礼売り上げがシティホテルの売り上げの大きな柱になっていたが、少子化や競争激化で今後は需要が縮むことが予測され、婚礼売り上げに替わるものとして、現在は一般宴会が注目されている。その一般宴会だが、MICE(マイス)という業界用語で呼ばれて注目されている。ここでは、このMICEを紹介したい。

MICEという造語は、Meeting(ミーティング)、Incentive(インセンティブ)、Convention(コンベンション)、Exhibition(エキジビション)の頭文字をとった造語である。

Meeting(ミーティング)は、会議全体を指す概念だが、MICEでは「企業が開催する会議(コーポレートミーティング)」を指す。Incentive(インセンティブ)は、企業がその従業員や代理店等に授与する褒賞や表彰を意味する。企業が提供する褒賞の形にはさまざまあるが、MICEが指すインセンティブは、「褒賞旅行(Incentive Travel)を指す。一般的に、何百人~何千人という大規模で開催されることが多く、また毎年リピートするケースが多い。Convention(コンベンション)は、一般的に政府関係、学会、協会、産業団体が開催する大型の会議を指す。Exhibition(エキジビション)は、展示会、トレードショー(TradeShow、大規模商談会)、見本市、博覧会を指す。

観光立国を目指す我が国だが、MICEは、インバウンド数を増やす一つの大きな要素となり、国をあげて取り組んでいる分野ゆえ、ぜひ概念だけでも覚えておこう。

Meeting

企業などのミーティング等。
例:海外投資家向け金融セミナー、グループ企業の役員会議 等。

Incentive

企業が従業員等の表彰や研修などの目的で実施する旅行のこと。企業褒賞報奨・研修旅行とも呼ばれる。

Convention

国際団体、学会、協会が主催する総会、学術会議 等。
例:IMF・世銀総会、国際幹細胞研究会議、APEC貿易担当大臣会合 等。

Exhibition

文化・スポーツイベント、展示会・見本市。
例:オリンピック、東京国際映画祭、東京モーターショー、国際宝飾展 等。


#08 GOPとは

ホテル経営で、最も多く出てくる経営指標、それが GOPだ。
GOPとはGross Operating Profitの略で、日本語では営業粗利益(えいぎょうあらりえき)という。売上から必要経費(人件費、食材原価、水道光熱費など)を引いて残った利益を指す。

このGOPという数値が、実はホテル業界ではとても重要視されている。いくら売り上げが大きいホテルでも、売り上げ以上に費用を使って赤字になっていたら意味がない。ホテルオーナーは、リターン(利益)を得るためにホテルを所有経営している。よって、利益こそが大事であり、その額や率がホテルの運営力を測る上で重視されるのだ。ホテルの所有者と運営者は、つねにこのGOPの額や率を数値目標にしており、その数値がホテルオペレーターの成績表になるのだ。

ちなみに、売り上げに対する GOPの比率(=GOP率)の理想は、一般的にはシティホテルでは20 パーセント以上と言われている。もちろん、ホテルによっては30パーセント以上、宿泊特化型ホテルなどは40~60パーセント以上というケースもある。

「GOPなんて、私には関係ない。目の前のお客さまに喜ばれればそれでいい」と思うかもしれない。それは「私はビジネスではなく、ボランティアでもいい」と言っているのと同じこと。ホテルだってビジネスなのだ。しっかりとしたビジネスを遂行し、利益を出していかなければ、給料も支払われなくなるのだ。だからこそ、自分が普段売っているコーヒーが一杯当たりどのくらいの利益を生み出し、GOPにどのくらい貢献しているのかということに興味を持たなければならないのだ。


#09 外資系ホテルとは

いわゆる外資系ホテルとは、外国資本のオペレーション会社が運営するホテルのこと。代表的な外資系のオペレーション会社に、ヒルトンワールドワイド(米)、マリオット・インターナショナル(米)、アコーホテルズ(仏)、ハイアット・インターナショナル(米)などが挙げられる。

このような外資系ホテルに対して、国内のホテルチェーンのことを国産ホテルとか、日系ホテルなどと呼び分けている。外資系のホテルは、所有する会社と運営する会社が分かれていることがほとんど。その状況を「所有と経営と運営の分離」と言う。少々難しいが、ここで所有と経営と運営の役割をご理解いただきたい。

所有

土地や建物といったホテルの不動産を所有するオーナー会社。

経営

オーナー会社の委託を受けて、ホテルの最終利益を管理する会社。たいていはオーナー会社の子会社またはグループ会社。

運営

ホテル運営を行うオペレーション会社。総支配人はじめ、キースタッフをホテルに派遣して、実際の営業を行う。経営会社が最終利益まで管理するのに対し、運営会社は営業粗利益までの責任を担う。

パークハイアット東京を例に解説してみよう。このホテルの運営会社は、ハイアット・インターナショナル・コーポレーションだが、所有会社は東京ガス都市開発、経営会社はパークタワーホテルである。これは、何を意味しているか。つまり、同ホテルに就職することは、ハイアットインターナショナルに入社するのではなく、パークタワーホテルに入社すること(外資系企業にではなく、日系企業に就職する)を意味するのだ。


#10 ホテリエに求められる語学力

就職するにあたり求められる語学力はホテルによってさまざまであり、一概にどうとは言えない。募集資格にTOEIC600 点以上」とうたっているホテルもあれば、何の基準も設けていないホテルもある。しかし、実際のところ都市部のホテル(特に外資系ホテル)では、外国人宿泊者比率が 5割を超えるところが多く、また今後さらにインバウンド(訪日外国人数)は増えると予想される。正確な英語をきれいな発音で完璧に話す必要は必ずしもないが、相手の望むことが理解でき、自分の言いたいことが伝えられるだけの語学力は必要である。

また、外資系ホテルの場合、上司が外国人であることも多く、社内文書も英語が基本。自分が働きやすい環境をつくるという意味でも語学力はあるに越したことはない。いま日本に来ている外国人も、そのほとんどが英語の非ネイティブスピーカーである。ブロークンイングリッシュでもいいので、「しっかり伝わるコミュニケーション力」が重要なスキルになる。


#11 海外ホテルへ行くチャンス

もちろん海外へ飛び出していくチャンスはある。1つは、ホテルに入社して研修で行かせてもらう方法。日系のホテルでも提携している海外のホテルがあるので、これは可能だ。ただし、3〜5 年勤続して、なおかつ働きが認められないといけない。それに、年に 2〜3人が一般的。

外資系ホテルの場合は、グループホテルが海外に多い分、そのチャンスは多いだろう。それに、「○○国のグループホテルが日本人担当ゲストリレーションズマネジャー募集」といった求人が募集されることがよくあり、それに応募することもできる。ただし、この場合は、一旦ホテルを辞めて海外のグループホテルに就職することになる。

「#09. 外資系ホテルとは」で説明したとおり、いわゆる外資系ホテルに就職しても、多くの場合はそのホテルの経営会社に就職するのであり、外資系ホテル運営会社の社員になるのではない。ホテルの経営会社から運営会社へ転籍ということもあるが、これは非常にレアケースであり、ホテルマネジメントをしっかりと体得し、ビジネス英会話レベルの語学力がないと難しいだろう。


#12 ホテリエに求められる能力

まず、一番重要なのは「ホスピタリティ精神」だろう。ホテルやレストランや病院などを総合して、ホスピタリティ産業と呼ぶが、やはり、前提条件としてホスピタリティ精神は不可欠な資質といえる。

たとえば、ホテルのレストランであるゲストが食後に薬を飲みたくて、薬の袋を出しながら「お水をいただけますか」と頼んだとする。その時に、いつも通り、氷がたっぷり入った水を持っていくサービスマンと、薬の袋を取り出しているゲストを見て、「水がほしい」と言う前に氷の入っていない水を出すサービスマンがいる。どちらが素晴らしいサービスかは言うまでもないだろう。

ホスピタリティ精神とは、相手の気持ちを察し、相手の立場になって考えて、思いやりのある施しを提供することである。やさしい気持ちと観察力が求められる。

ホスピタリティ精神は、必要条件である。ただし、それだけではだめだ。「ホスピタリティ精神」と並んでホテリエに求められる能力として重要なもの。それは「バランス感覚」である。ここでいう「バランス感覚」とは何か。それは「ホスピタリティ精神」と「経営(マネジメント)の視点」とのバランスである。

近年のホテル業界の就職活動では、単に「ホスピタリティ精神」があるというだけでは通用しない。なぜならホテルもまたビジネスだからだ。ビジネスである以上利益を上げなければならない。そのため、ホテルをビジネスとして捉えられる「経営の視点」を持った学生が求められている。説明会でも「経営の視点を持った学生を採用します」とハッキリと言い切るホテルも多い。

しかし「経営の視点」と言っても、それは経営の知識とイコールではない。ホテルの人事が学生に、完璧な知識など求めるはずがない。ただし、最低限の知識は必要だ。最低限の知識とは、本書に書かれている知識や情報のレベル。それ以上の知識を、人事担当者が学生に求めることはないと思って安心してほしい。


#13 ホテルにおけるキャリアパス

日本のホテルでは、ベルやウエーターなどの接客を経験し、5 〜10 年かけてその部署のキャプテン・インチャージクラスまで経験した後、営業企画やPRなどのバックヤードにまわってマネジメントに携わるという流れが一般的だった。

しかし、近年この流れも変わりつつあり、新卒者がすぐにバックヤードに配属されたり、入社数年でマネージャー職に抜擢されるケースもある。これは、各ホテルの人事評価基準や評価方法によってまったく異なるため、会社説明会等でそのホテルのキャリアパスについて聞いておくとよい。

これに対し、海外のホテルに見られるキャリアパスの典型は、現場でのプロを目指すスペシャリストコースと、ホテルのマネジメント職を極めていくゼネラリストコースを個人に選ばせるもの。スペシャリストコースを選ぶと、基本的には部署の異動がなく、1つの部署でその道を究めることになる。チップによるインセンティブで収入を得て、社会的にもそれ相当の評価を得られるのである。対するゼネラリストコースを選ぶと、まずは現場のマネジャークラスに進み、部門長やバックヤードのマネジャーへと進んでいく。そして最終的には総支配人を目指すことになるのである。

キャリアパスは、そのホテルの運営形態によっても変わってくる。すなわち前述の所有・経営・運営の問題が個人のキャリアにも大きく関わるのである。例えば、経営会社に入社していながら、運営会社の役職であるところの総支配人に就任することはできない。経営会社と運営会社の異なるホテルでキャリアアップし、そこで総支配人を目指すのであれば、どこかで運営会社に転籍する必要がある。

入社後、どのような道を歩んでいくかはすべてが本人次第。長期的な目標を持って、道を切り拓いていこう。

HOTERES新卒情報とは

ホテル業界専門の新卒ナビサイト

ホテル業界を目指す学生のための、完全無料の新卒ナビサイトが誕生!
掲載企業は全国のホテル・旅館の企業のみ。
大手サイトでは見つけられなかった、すてきな企業に出会えるかも?

企業からスカウトが届く!

マイページにてアピール情報(資格、学生時代の経験など)を登録いただくと、企業からのスカウトを受け取りやすくなります。
志望する職種やホテルタイプも登録できるので、自分では見つけきれなかった企業からスカウトが届くことも!
ぜひ、プロフィール情報を充実させて、自分をアピールしましょう!

PC・スマホ・タブレットで隙間時間に就活!

HOTERES新卒情報には全国のホテル業界の企業情報はもちろん、インターンシップや合同会社説明会などのイベント情報、ホテル業界の就活に役立つコラムなど情報満載!
就活は早めの情報収集が鍵。移動中などの隙間時間も活用して、情報を取りこぼさないように努めましょう!
気になる企業をキープしておけば、企業からのメッセージも受け取れます。
もちろん、インターンシップや説明会、面接の応募もこのサイトから可能です!